このたび「そしてまたユートピアを」と題し、初の個展を開催いたします。
本展では、作者であるヒラヤマが幼少期から現在まで暮らしている多摩ニュータウンと、その周辺で起きている大規模開発事業にまつわる作品を展示します。
多摩ニュータウンとは、高度経済成長期に伴い東京で起きた深刻な住宅難を解消するために多摩丘陵を開発し作られた、日本最大規模のニュータウンです。1971年の第一次入居から約40年にわたり、各地域ごとに多くの団地や戸建て住宅が建設されてきました。老朽化、孤独死、郊外型犯罪など批判的に語られることも多い中、現在もこの多摩ニュータウン周辺では大規模な宅地開発や新たな住宅地建設が日々行われ、まるで侵食するように新しい街が広がり続けています。ニュータウンは異質なものを徹底的に排除した無菌室のようであり、それは同時に、作られたユートピアのようでもあります。
このたび展示する『越してきたばかりの新しい家族は今日も、今晩の夕飯の話をしながら買い物カゴを手に取る』『隣り合う人の顔も知らぬまま』と題した2作品は、そんな多摩ニュータウンで現在行われる、大規模開発事業による自然破壊を契機とした作品と、多摩ニュータウンに隣接し存在するブルジョアジーの象徴ともいえる広大なゴルフ場にまつわる作品です。
無菌室を出て、中学・高校と6年間通学した親しみ深い吉祥寺での、2年間の集大成となる本展をぜひご覧ください。
ヒラヤマナツホ
1994年東京生まれ。
多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コースを卒業後、現在は同大学大学院に所属
”繰り返す”行為や動きをキーワードに、白い装置のシリーズやインスタレーションを制作する。最近はニュータウンや郊外について考えている。